2026.07.22
村上隆 ── 値札ごと飾る絵
2008年5月、ニューヨークのサザビーズで、一体のフィギュアに1516万ドル、日本円でおよそ16億円の値がついた。作者は村上隆、作品は1998年の「マイ・ロンサム・カウボーイ」。身長2.5メートルほどの、アニメの造形を思わせる立像だ。事前の予想は3〜4億円だったから、会場からは拍手が起きたという。日本人の作家の作品としては、当時の最高クラスの落札額だった。
村上隆は1962年、東京生まれ。出発点は意外にも日本画で、東京藝術大学で博士まで進み、日本画科では初とされる博士号を取っている。つまり伝統的な絵の世界から来た人だ。日本画の世界から現代美術へ移り、2001年に「スーパーフラット」という考え方を打ち出した。西洋の遠近法ではなく、日本の絵やアニメ・漫画に共通する、奥行きのない平面。その「平べったさ」を武器にして、高尚とされる美術と、オタク文化やキャラクターを、同じ一枚の面の上に並べてみせた。
村上がほかの作家と違うのは、お金の話を隠さないところだ。2006年の著書『芸術起業論』で、欧米の美術の世界はルールとお金で回っている、日本の作家はそこから目をそらしていて甘い、とはっきり書いた。制作の場も一人のアトリエではなく、カイカイキキという工房で、大勢のスタッフが分業して作る。ルイ・ヴィトンと組んでモノグラムのバッグを作り、代名詞の「お花」はぬいぐるみやグッズになって世界中で売れた。
だから村上の仕事では、値段そのものが作品の一部になっている。16億という数字が付いた瞬間から、作品は数字ごと語られる。美術とお金を敵同士にしない、というより、値札を絵の中に取り込んでしまう。壁に村上を一枚飾るというのは、絵を飾ると同時に、その絵の値札を飾ることでもある。
きれいごとで隠さなかった、とも言える。値札のついた街で、値札そのものを正面から作品にした人だ。
次は村上隆でも飾る部屋の壁 / まるでコンバーチブルみたいな欲
——RAq「Haze」
▷ この曲を聴く https://big-up.style/9Z06kYQu0C
RAq Profile https://mybase.fan/raq
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